千葉県鴨川市にある大山寺は、古来から安房修験の中心的な寺院として鴨川市域の長狭郷を見守ってきた、地域アイデンティティの形成に欠くことのできない歴史文化遺産です。
また、そうした寺院であった背景から、「日光東照宮に優るとも劣らない」ともいわれる厨子をはじめ、千葉県指定文化財の不動明王坐像、不動堂や、鴨川市指定文化財の宝篋印塔、鐘楼、棟札などの歴史文化遺産が集中しています。
しかしながら明治時代の神仏分離令、修験禁止令の影響で管理が行き届かなくなり、今日では建造物は老朽化による倒壊の危機にあり、多くの文化財が損壊しかねないという待ったなしの状況にあります。
そこで、大山寺という貴重な歴史文化遺産を次世代に伝えるとともに、歴史に裏打ちされた個性的で魅力的な地域づくりをすすめる資源とすることを目指して、地元市民を中心に任意団体「大山寺修復を目指す会」が組織され、大山寺保存のための基礎調査や、大山寺の価値を多くの皆様に理解していただくための講演会などの普及活動が行われてきました。
今後、大山寺を鴨川に残された地域創生の資源として利用していくためには、一日も早い修復を実現しなければなりません。それには広範囲の理解を必要とするうえに、修復等の費用調達を行いやすい体制を整備し、修復が完了したのちも地域の活性化・発展に寄与する大山寺を保存していく継続的な活動が求められます。
そのためには法人格を持つ組織が適しているとの理由から、大山寺の保存と大山寺を利用した地域活性化のための活動を継続すべく、平成27年(2015)に「特定非営利活動法人かもがわ大山寺保存会」が設立されました。
NPO法人 かもがわ大山寺保存会 理事長
小川 直男